知られざる職人ベーシスト達

今回紹介するベーシストの知名度はそんなにないと思うんだけど、実際どうなのかはよくわからない。とりあえずタイトルは「知られざる」としたけど。

 

ところで、世界三大ギタリストと言えば、エリック・クラプトンジミー・ペイジジェフ・ベックが挙げられることがほとんどだと思うけど、その中でベーシストにうるさいのがジェフ・ベックなんじゃないかなと思っていたりする。クラプトンやペイジももちろんいいベーシストを従えて演奏してきたと思うけど、ジェフ・ベックはどうも職人的気質が若干強いようで、共演者にもそれを求めるところはあるのかもしれない。

 

例えば以前紹介した、Tal Wilkenfeldなんかもそうだろう。

 

bassman.hateblo.jp

 

共演映像ではよく知られているのがこれ。

 

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Talがベースソロを弾いている時のジェフ・ベックの楽しそうな事。挙句にはセクハラまがいのこんなお戯れまでやっている。

 

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まー、とにかくジェフ・ベックはタルをかなり気に入っていた事だけは間違いない。さて、そんなジェフ・ベックと共演した人に、フィル・チェン という知る人ぞ知るベーシストがいる。多分ほとんど知る人はいないのではないだろうか。

 

 

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こちらの紹介動画を見ても誰だか全然わからないかもしれない。僕もたまたま今検索しただけであるが、ジェフ・ベックのブロウ・バイ・ブロウってアルバムでジェフ・ベックと共演している。中国系のジャマイカ人だそうである。このフィル・チェンを一部界隈(要するにベーシスト界隈)で一気に有名にしたのがこの曲である。

 

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今では知らない人も多いだろうけど、前世紀のスーパー・ロック・ボーカリストであられるロッド・スチュアートのこの曲である。この、ドッパパ、ドッパパ・・と続くオクターブフレーズのベースラインがあまりに当時新鮮だったので、これを聞いたベーシストはみんな真似しようとしたわけである。ところが、これがやってみるとクソ難しいらしい。

 

フィル・チェンはツーフィンガーでやっているんだけど、スリーフィンガーだと勘違いした人も多いらしい。僕はツーフィンガーで若かったからか割とすぐにマスターしてしまったけど、僕が弾くのを見て「どうやって弾いてるの?」と別のベーシストから何度も聞かれた。自分自身ではそんなに苦労した覚えはないのだが、ネットで検索かけてもこのベースラインの話題に結構出くわすので相当難しいのだと思う。

 

このドッパパベースラインフレーズがいかに数多のベーシストに影響を与えたかというと、以前少しだけ触れたけど青木智仁が杏里の「悲しみが止まらない」という名曲で取り入れたのがその象徴になるかもしれない。

 

※ここでその杏里の曲のYouTube動画リンクを貼ろうとしたが、YouTubeに動画があってもすぐ削除されるので貼らないことにした。サブスク音楽配信サービス等にもあるので聞いてみて欲しい。控えめに青木氏がドッパパを弾いている。

 

追記:

ところでそのロッド・スチュアートの"Do Ya Think I'm Sexy"って曲、実は盗作である。*1

ジョルジ・ベンというブラジル人アーティストの「タジマハール」という曲のサビメロディを完全にパクっている。今回改めて聞いてみたがどう聞いてもパクリである。訴訟になってロッドの敗訴、盗作で確定している。ちなみにどういうわけかロッド側はタジマハールの方が盗作だと主張したらしい。三年も前にタジマハールの方が先に発表されてるのだから頭がおかしいと言わざるを得ない。他にもストリングス編曲がそっくりな曲が他にあるのだがそちらは訴訟になってない。こうした盗作騒動は音楽業界では昔から洋の東西を問わずよくある話ではあるが。但し、フィル・チェンのベースラインはまず間違いなくオリジナルである。

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さて次は、この人。

 

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今時は、ポリティカル・コレクトネスっつって差別的な表現には気をつけなきゃいけないのだけど、当時はこれは絶対「黒人ベーシスト」に違いないと思われた。ここまでのファンキーなグルーブのベースは絶対黒人でなければあり得ない、と。実際には、肌の色でそんな違いがある筈はないんだけど、「黒人音楽」という分類がしっかり根付いていた時代(今もかもしれないが)、開けてびっくりこれはウィル・リーという白人ベーシストとわかって大勢が驚いた。

 

この24丁目バンドってのは、実は日本人による企画で、日本で売れることを最初から目的にしていた。目論見通りヒットし「やっぱアメリカの音楽って最高だよね」みたいに日本人に思わせたのである。だから「黒人ベーシストに違いない」と騒いでいたのはどうやら日本人だけのようだ。まぁ、ネットもない時代、情報も限られていたから仕方ないよね。

 

確かにしかし、そのファンキーなグルーブは素晴らしいもので、上手いと言わざるを得ない。ここまで上手いともちろん本場アメリカではスタジオ・ミュージシャンとして引っ張りだこで、今でも超一流ミュージシャンとして活躍しておられる。ちなみにあのサドウスキーベースを有名にした一人でもある。

 

ウィル・リーは大の日本好きであることでも知られ、日本人アーティストとも多く共演しているし、個人的に知っているところでは、割と最近、日本人若手天才女性ドラマーとして有名な佐藤奏さんのYoutube動画にウィル・リーがコメントしたりしている。ぜひ共演を果たしてほしいところではあるが。

 

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実は今回はこれが言いたかったw。僕はずっと前から佐藤奏さんの大ファンなのでもっと多くの人に知ってほしいなぁとか思ってるので。